静岡ガスグループは、2023年3月、「気候関連財務情報開示タスクフォース(以下、TCFD)」による提言に賛同し、TCFDコンソーシアムに加盟しました。

ガバナンス
当社は、気候変動対応を経営の最重要課題の1つであると認識をしており、常勤取締役および執行役員等で構成され、グループ全体の経営に関わる重要事項について審議を行う経営会議において、適宜、議題として取りあげ、気候変動を踏まえた事業リスク・機会や対応策などを議論しています。また、取締役会においても、こうした気候変動対応に関わる重要事項について、適宜議論や意思決定を行っています。
この体制に基づき、当社の2030年までの経営方針と取り組みを示す「静岡ガスグループ2030年ビジョン」(2021年12月公表)や、気候変動に関する中長期的な方向性や取り組みを示す「2050年カーボンニュートラルビジョン」(2021年8月公表)については、経営会議での審議を経て取締役会にて審議し、策定致しました。
また、各執行部門は、気候変動対応を含むサステナビリティの推進に際し、目標達成に向けてPDCAサイクルを回し、取り組みます。
各執行部門は、年に1度以上、取り組み状況やその進捗について、経営会議、取締役会に報告し、その実効性について議論することで取り組み推進を図っています。

戦略(シナリオ分析の前提)
当社では、気候変動が中長期的な事業に及ぼすリスク・機会や戦略のレジリエンス性についてシナリオ分析を実施しました。
シナリオ分析では、当社事業全体を対象とし、短中期(~2030年)・中長期(~2050年)の時間軸にて、世界的な気候変動対策が成功するシナリオ(GHG排出規制等により主に「移行リスク」が顕在化する2℃未満シナリオ)と、不十分なままとなるシナリオ(異常気象の増加等により主に「物理リスク」が顕在化する4℃シナリオ)の2つのシナリオを考慮しました。
シナリオ分析で検討した内容は、今後の当社の事業戦略やレジリエンス向上に活用していきます。
参照したシナリオ
リスク/機会 | 4℃シナリオ | 2℃未満シナリオ | |
移行 | 国際エネルギー機関(IEA)World Energy Outlook 2022 |
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物理 | 気候変動に関する政府間パネル(IPCC)の第6次報告書、 IPCC 6th Assessment Report Sea Level Projections |
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シナリオ分析で主に考慮したもの
戦略(リスク・機会・対応策)
リスク
主に顕在化するシナリオと外部環境 | 事業への影響 | 時間軸 | |||||
短中期 | 中長期 | ||||||
リスク | 2℃未満 | 移行 | 規制 | 炭素税導入 化石燃料規制 |
当社およびお客さまを含む天然ガス利用者における 負担増加、電化進展に伴うガス需要縮小 |
○ | ○ |
技術 | 天然ガスの脱炭素化 | ガスの脱炭素化技術導入の遅延、失敗に伴う競争力低下 | ○ | ○ | |||
再生可能エネルギー技術の進展 | 電化進展に伴うガス需要縮小 | ○ | ○ | ||||
エネルギー×デジタルの進展 | エネルギーの効率化によるエネルギー需要の減少 | ○ | ○ | ||||
市場 | グローバル天然ガス・エネルギー市場の変化 | 上流事業減退に伴うLNG供給減による調達価格の上昇 | ○ | ||||
評判 | 外部の評価 | 脱炭素に向けた取り組みの遅延に伴う評価低下・ 資金調達難 |
○ | ○ | |||
4℃ | 物理 | 気象災害の激甚化 | 製造・供給能力の停滞 自然災害対応コストの増大 |
○ | ○ |
財務影響の大きいリスク
機会
主に顕在化するシナリオと外部環境 | 事業への影響 | 時間軸 | |||||
短中期 | 中長期 | ||||||
機会 | 2℃ 未満 |
移行 | 規制 | 炭素税導入 化石燃料規制 |
石油・石炭から天然ガスへのシフト、 再生可能エネルギーの普及拡大 |
○ | |
カーボンニュートラルメタンの需要拡大 | ○ | ||||||
技術 | 天然ガスの脱炭素化 | カーボンニュートラル・LNG/LPG導入、 メタネーション・CCU技術開発推進 |
○ | ||||
カーボンニュートラルメタンの導入・拡大 (水素・アンモニア等も検討) |
○ | ||||||
再生可能エネルギー技術の進展 | 再生可能エネルギーの拡大 | ○ | ○ | ||||
エネルギー×デジタルの進展 | スマートエネルギーネットワークにかかる ビジネスの拡大 |
○ | ○ | ||||
市場 | グローバル天然ガス・エネルギー市場の変化 | 東南アジアを中心とした 天然ガス・再生可能エネルギー需要の増加 |
○ | ||||
評判 | 外部の評価 | 脱炭素に向けた取り組みの進展に伴う 評価向上・資金調達の円滑化 |
○ | ○ | |||
4℃ | 物理 | 気象災害の激甚化 | 分散型エネルギーの需要拡大、 スマートエネルギーネットワークの普及 |
○ | ○ |
財務影響の大きい機会
リスクと機会に対する主な対応策
主に顕在化する シナリオと外部環境 |
主な対応策 | |
2℃未満 | 移行リスク /機会 |
|
4℃ | 物理リスク/ 機会 |
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戦略(戦略のレジリエンス性)
当社グループは、エネルギーの気候変動対応ニーズを事業機会と捉え、ガスのカーボンニュートラル化や再生可能エネルギー電源の開発、スマートエネルギーネットワークの構築、国内外における森林保全によるCO2吸収に取り組み、事業の成長を維持していきます。また、気候変動の影響を受けにくい事業分野の拡大を推進し、リアル接点とデジタル接点の活用による個々のお客さまのライフステージやビジネスに合った課題解決に取り組みます。
また、カーボンニュートラルメタン等の革新的技術が実用化されるまでの移行期(~2030年)においても徹底したCO2削減が重要であり、天然ガスシフトによる低炭素化やエネルギー高度利用等による省エネ推進などを通じて、お客さまのCO2削減に貢献していきます。
世界の気候変動対策が不十分なままとなる4℃シナリオにおいては、既存の都市ガス事業への影響は2℃未満シナリオに比べ限定的になると想定されます。一方で、自然災害の増加などが予想され、ガスのレジリエンス性や分散型エネルギーの必要性が強く求められるようになり、スマートエネルギーネットワークの構築への取り組みが重要となります。引き続き、既存事業の強化とレジリエンス性の維持向上に向けて取り組んでいきます。
リスク管理
当社グループの事業活動に与える影響が特に大きいと考えられるリスクと機会については、中長期的な対応計画を策定し、経営会議において審議すると共に、取締役会に報告しています。計画については、継続的な見直しを行い、適切な管理に努めていきます。
指標・目標
当社事業は、化石燃料の供給を主とすることから、CO2排出量の削減が重要課題となっています。当社は、カーボンニュートラルメタンや水素、アンモニア等の利用、再生可能エネルギー電源の開発等に取り組み、2050年にカーボンニュートラルを実現すると共に、カーボンニュートラルメタン等の革新的技術が実用化されるまでの移行期においては、天然ガスシフトや省エネ等の促進により、2030年までにCO2削減貢献量200万tを目指します。
また、都市ガス事業以外の新たな成長事業を確立することで、さらなる成長を目指します。
気候変動関連指標と目標
項目 | 目標 |
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カーボンニュートラル目標 | 2050年カーボンニュートラルを実現 |
CO2削減目標 | 2030年までにCO2削減貢献量200万t ※2021年以降の当社グループの事業活動を通じたCO2削減貢献量 →静岡ガスグループ2050年カーボンニュートラルビジョン |
再生可能エネルギー電源の開発目標 | 2030年までに20万kW ※FIT電源、調達を含む |
事業ポートフォリオ | →静岡ガスグループ2030年ビジョン |