テーマ 在来作物の魅力に触れる
静岡のみならず世界の在来作物と出会ってきたゲストとともに、実際に味わいながら、その魅力と可能性に触れてみる。


「弱者の戦略(新潮社)」「生き物の死にざま(草思社)」など著書は150冊以上。入試に使われる著者ランキング1位でも知られる。 2012年より静岡県の在来作物を調査・研究し、「しずおかの在来作物—風土が培うタネの物語(静岡新聞社)」をまとめている。54歳。
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静岡のみならず世界の在来作物と出会ってきたゲストとともに、実際に味わいながら、その魅力と可能性に触れてみる。
第8回は10周年を迎えたエネリアショールーム静岡で、「10周年祭~地元再発見!~」との同時開催となりました。テーマは‘地元’つながりで「在来作物」。
食文化や文化財を通じて、静岡市中山間地オクシズの魅力を広く伝える一般社団法人しずのわさんのご協力のもと、オクシズの在来作物やパネルが並ぶ会場には、学生、農家、フードコーディネーターなど20代~70代の19名の方がお集まりくださいました。
ゲストは、在来作物の研究家であり、”雑草”の専門家でもある農学博士の稲垣栄洋さん。その日に井川から届けられた「在来らっきょ」と「からし菜」の香りが溢れる中、前回に続きモデレーターをつとめる片川乃里子さんから稲垣さんに投げかけられる「在来作物ってなんですか?」「静岡にあるの?」という素朴な問いから前半のトークは始まりました。
農作物は通常、大量生産・輸送に適するように、効率化や揃っていることが求められますが、在来作物は‘効率化できない’‘揃わない‘ことが特徴です。「甘い」「うま味がある」といった単独の指標では、改良を重ねた現代の優秀な野菜に劣ってしまいますが、「味の数の多さ」による複雑な味わいが、その作物にしかないおいしさとなっています。さらに流通に適していないことから、その地でしか食べられないものとなっていることも魅力です。稲垣さんは、そんな在来作物を地域の武器に町おこしをしていたヨーロッパの実例に触れ、在来作物は地域を元気にするものにきっとなると感じ、もっと知りたいと研究を始めたそうです。調べていくと、静岡には250種以上という多くの在来作物が残っていることがわかり、驚いたそうです。そのいくつかの特徴を、エピソードを交えながら歴史や背景とともに紹介してくださいました。
前半戦の最後はいよいよ実食。当日の午前中に井川の望月さんと西川さんが作ってくださった「きびおにぎり」「からし菜の和え物」「塩らっきょ」を全員でいただきました。井川では焼き畑をする朝にたくさん作り、作業の合間にみんなでたべるそうで、そんな井川の風景や風土を想像しながらいただきました。シンプルなのにパンチがあるおいしさに、箸が進みあっという間に完食。井川の恵みが体に染み入り、力が湧いてくるのを感じました。
後半戦では、グループにわかれて前半や実食しての感想を共有しました。同じものを食べたことで結束がうまれたのか、どのグループも、話が止まらないほど熱いディスカッションで盛り上がりました。最後には、「在来作物のように昔から続き、価値があるものを次の世代に伝えるために自分ができるアクション」を一人ひとりが考えました。
学んで、見て、食べて、体感して、と充実した今回のBRIDGESHIZUOKA。
「価値があるものは、世界の遠くにあると思いがちだが、見方や視点を変えると、いままで価値がないと思っていたところ、身近なところにあるかもしれない。バラバラで、そろっていない面倒くさいことも大事」稲垣さんの言葉が印象的でした。‘みんなちがってみんないい’、そんなあらゆるものを認め、受け入れること、在来作物の力強さに前に進む力をもらいました。今回のBRIDGESHIZUOKAが、改めて地元静岡に目を向けるきっかけとなったとしたらうれしいです。