テーマ 職場が変われば、まちが変わる

静岡発の全国的なワインブランドを築き、様々な立場から会社を見つめてきたゲストを招いて、「働く場所としての静岡」の魅力と課題を考える。

GUEST
種本祐子氏
株式会社ヴィノスやまざき 取締役社長
静岡市出身。1987年に実家である山崎酒店に入社し、ワイン部門を立ち上げ。1990年代から海外産地と組んだワインの直輸入を拡大。2014年、ヴィノスやまざき取締役社長に就任。全国24店を展開する。伊藤ハム米久ホールディングスや静岡鉄道の社外取締役を歴任する。

Moderator

村越真氏
静岡大学教育学部 教授

9月末で緊急事態宣言が明けて、おそるおそる募集を開始したBRIDGE SHIZUOKAですが、満員御礼となり、静岡県内各地から21人の方に参加いただきました。「働く」というBRIDGE SHIZUOKAとしてはやや硬めのテーマ設定でしたが、会社員だけではなく、会社役員・経営者やフリーランスまで、様々な立場で働く30代と50代が目立ち、約半数が女性でした。

ゲストは、ワインショップ「ヴィノスやまざき」を全国展開する種本祐子さん。百貨店やショッピングセンターのキーテナントとしても商業界で注目されていますが、実は静岡に本店を構えているので、静岡のみなさんにはおなじみの存在です。種本さんは昔ながらの酒屋さんの一角にワインコーナーを設け、そこから全国ブランドに発展させたいわば起業家。一方で、女子高、女子大を出て、海外に関わる仕事をしたいと願っても、当時は女性にそのような仕事は少なく、もどかしい思いをした過去もお持ちだそうです。

ワインがまだそれほど一般的でなかった時代。種本さんは顔の見える小売店でお客さまの声に耳を傾け、こんな味でこんな値段ならお客さまにきっと買っていただけるという仮説を持ち、海外の産地へ自ら足を運んで、ワインの買い付けや共同開発に取り組んできました。ある意味で、自ら仕事をつくり、海外と関わる仕事をするという夢を実現させたのです。参加者のみなさんからも、静岡は女性が活躍する場が少ない、選択肢が少ないという意見があがるなかで、静岡で起業した女性の体験談や、種本さんがヴィノスの社員に社内起業しなさいとハッパをかけている話から会場の熱気が上がり、参加者はそれぞれの仕事観について意見を交わしていました。詳しくはYouTubeアーカイブをご覧ください。

「仕事はお困り助け業、だと思うのです」。種本さんの最後の言葉は、種本さんと参加者のみなさんのたくさんのエピソードを聞いた後だからこそ、響くものがありました。かつて、種本さんはワインが飲めなかったそうです。でも、本当においしいワインを安く購入できないたくさんお客さんがいると知り、届けるためにはどうすればいいかを考え続けてきただけ、とのお話がありました。アフターコロナの時代は、助けあい、思いやりが企業の根っこの部分でさらに必要になる、とも。静岡、東京、それ以外を含めて、たくさんの職場や働き方がある中で、自分にとっての「働く」とは何かを、参加者のそれぞれが考えた約2時間になりました。

BRIDGE SHIZUOKAは、ゲストの話を聞く、だけで終わらせずに、皆と意見交換をして、何かひとつでも自分から動いて変えていけることを探そう、というイベントです。参加者のみなさんにはその表明として、恒例となったBRIDGEカードに「働く場所としての静岡をもっと魅力的にするために わたしができる小さなアクション」をそれぞれ書いてもらいました。

職場が変われば、まちが変わる――。人は、人生の多くの時間を働くことに費やします。「いい時間」でなければ、静岡でくらす人にも、まちにも、活気は生まれないでしょう。自分らしい働き方を選べる、そんな選択肢を提供できる、生み出せるような社会が、そこに住む人を少し、幸せにするのかもしれません。

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