富士宮やきそばの麺は、勘違いから始まったのよ。少し時代を遡って、太平洋戦争でマルモ食品工業の創業者である望月晟敏が東南アジア方面に出兵した際、インドネシアで飲み水に困っていた漁夫にお水を分けてあげたところ、その漁夫にお水のお礼にビーフンの麺をいただいたの。それまでビーフンを食べたことがなかった晟敏は、部隊専属の韓国人コックに料理してもらって食べたところ、今まで食べたことのない美味しさにとても感動したの。
その後、終戦を迎えて富士宮市に戻った晟敏は仕事を始める際、あのビーフンの美味しさをもう一度味わいたいと思って、アメリカ軍から配給された小麦粉で試行錯誤の末、生まれたのが現在のマルモのやきそばの麺なのよ。

本来、ビーフンは米粉が原料なんだけど、ビーフンが何でできているのか知らなくて、小麦粉を使うという大きな勘違いをしたおかげであの独特な麺を作ることができたの。

富士宮市は戦前から戦後にかけて、富士山の登山客や製糸業の発展でとても賑わっていたのよ。
特に製糸業では、工場で働く若い女性も多かったの。そうした街中の駄菓子屋の一角では安価でお手頃な食べ物としてお好み焼きが人気だったんだけど、そのメニューの１つとして現在の富士宮やきそばを加えてもらったところ、市民の間で根付いていったのよ。
時代を経て、現在の富士宮やきそばは日常的にますます市民の中で浸透していったんだけど、富士宮市民にとって「やきそば」＝「現在の富士宮やきそば」だったから、特に独自の食文化だっていう意識はなかったの。
それが1999年、地元の独特なやきそばに着目し、富士宮やきそばを地域おこしに活用したところ、B級グルメとして人気に火がついて、B-1グルメでも2回も1位になるなど全国に広まったのよ。

富士宮やきそばの特長は何といっても硬くてモチモチとした麺。
通常、やきそばの麺は蒸した後に茹でるという工程があるけど、富士宮やきそばの麺は「蒸す」という工程だけで作っているのよ。
マルモ食品工業の麺は独自の製法で丁寧に作っているんだけど、とりわけ水分には先代の頃より一貫してこだわっているの。麺は温度や湿度など、日々の気候条件によって左右されやすいから、毎日水の量を微調整しているのよ。
もちろん、原材料も出来上がる麺の特性に合った厳選したものを使用しているのよ。
それからマルモ食品工業では衛生面を含めた食品安全管理を実践するISO22000を取得しているから、小さなお子さまからどなたでも安心して食べていただけるわ。

富士宮やきそばの麺は、普通のやきそばの麺に比べて水分が少なくて硬いから、お湯を使ってお好みの硬さに調整してね。調理する際、肉かすやイワシのだし粉を使うのも富士宮やきそばの特徴。
あとは、ねぎや桜エビ、目玉焼きなんかをのせて自分流にアレンジしてね。
それから、マルモの蒸し麺は富士宮やきそば以外にも美味しい食べ方がたくさんあるの。
少しカリっとなるまで焼いた麺の上に中華あんをかけて、あんかけやきそばにしたり、ケチャップや牛乳を使ってナポリタン風やクリームパスタ風にアレンジしたり。
色々な食材を使って、マルモの麺のアレンジメニューを考案してみてね。

富士宮やきそばを通じた地域交流として、地元の旭出学園の生徒さんに絵を描いてもらったのよ。近くを通った方にも喜んでいただいているわ。
それから、富士宮やきそばの魅力を広めたくて、富士宮市内の高校の学園祭に協力したりもしているの。
進学や就職で富士宮市から出ていく若者も多いから、地元の味をしっかり覚えて、帰省する際には「富士宮やきそばを食べたい！」って思ってもらえると嬉しいな。

他にも、幼稚園のママたちが集まる会に参加して、富士宮やきそばの焼き方教室をやっているわ。
特に結婚などを機に富士宮市に移り住んだママたちに好評なのよ。
今後も先代からのこだわり、伝統の味を守りつつマルモの麺、富士宮やきそばの魅力を広めていきたいわ。

次回更新は、2月の予定です